月末積立は損している ~最適な積み立て日は?~
長期積立投資がいろいろなメディアで取り上げられるようになったここ数年、NISAなどの制度を利用して資産形成を始める方も増えています。給料日直後に定額で毎月投信を購入すれば、誘惑に負けずに資産形成ができて良さそうですよね?
でもあなたが設定したその積み立て日によって、知らない間に損をしているかもしれません。
シミュレーションで確認してみる
下記のチャートはヴァンガード社が運用する上場投資信託(ETF)です。手数料が非常に安く、インデックス投信の人気ランキングの常連となっています。このチャートを使って簡単なシミュレーションをしてみます。
毎月何日にこの投信を購入するのがお得なのでしょうか?
シュミレーション条件
- 期間2010年~2021年
- 毎月決まった日に定額積立
- 毎回100ドル分買付け
- 最終日(2021/9/16)の評価額でパフォーマンスを測定
シュミレーション結果は…?
下記のグラフが、定期積立日毎のパフォーマンスのシュミレーション結果です。縦軸は投資額に対して、最終日にどこまで増えたかを示しています。
結果として、毎月1日に購入すると最もリターンが高く、逆に30日に購入するのが最もリターンが低くなります。その差は7%とかなり大きなものとなっています。
まとめ
今回シュミレーションしたヴァンガード s&p ETFでは毎月1に購入することでパフォーマンスが最も高くなることが分かりました。
しかし、積立NISAなどで購入出来る投資信託は、積立日と実際の買付け日に数日のタイムラグがあり、狙って毎月1日に購入するのは少し面倒です。
そんな方にはETFを直接購入するのがおすすめです。投資信託と違ってETFはリアルタイムでの取引が可能であるため、毎月1日に購入するのは投資信託よりも簡単です。また、手数料が圧倒的にETFの方が安いというメリットもあります。
株はランダムウォークする?~株価をスペクトラム解析してみる~
株価はランダムウォークする、という話を聞いたことはないでしょうか。すなわち、短期の値動きは予想が不可能で、それを予想しようとすることは投資ではなく投機(=博打)である、というのです。しかし、本当に規則性はないのでしょうか? 気になったので、フーリエ変換を使ってスペクトラム解析をして、ランダムウォーク説を考察してみます。
まずは株価データを用意
今回は下記の株価データを使用します。以前作ったスクレイピングツールに適当に銘柄コードを入力して準備したものです。どの企業のものかは知りませんが、今回はあまり関係ないので、良しとします。
ちなみにスクレイピングとは、Web上から自動でデータを取集する手法です。これが使えるようになるとあらゆるデータを自動かつ瞬時に取得できるため、かなり便利です。
まず目につくのは2008年頃の大暴落です。リーマンショックの影響と思われますが、凄まじい暴落の仕方です。リーマンショック前の水準に戻るまで約10年の月日を要しており、長い日本経済の停滞を感じさせます。
フーリエ変換ってなに?
フーリエ変換とは。。。?と思われた方。簡単に説明すると、ある周期をもつ波形(今回は株価)を複数の正弦波に分解するという、信号解析によく用いられる手法です。
例えば上記の右の波形をフーリエ変換してみましょう。この波形は左図の3つの波形を足し合わせたものです。上から二番目、三番目の波形はそれぞれ一番目の波形の5倍、15倍の周波数を持つ正弦波です。
フーリエ変換の結果、横軸の1,5,15に成分を持つことがわかります。すなわち、基本となる波と、その5倍波、15倍波の加算した波形であるという正しい結果を導くことができました。
ではこれを株価に使用したとき、何がわかるのでしょうか? 株価も複数の正弦波の重ね合わせだと考えてみましょう。フーリエ変換を使用することで、株価が長期(周波数の低い)の変動の影響を大きく受けるのか、あるいは短期(周波数の高い)の変動の影響を大きく受けるのか、それらを定量的に分析することが可能になるはずです。
さっそくフーリエ変換してみる
最初に紹介した株価をフーリエ変換した結果がこちらです。横軸(freq.)が大きいほど周波数の高い成分(短期的な変動)です。また、縦軸はその影響の大きさの度合いを表しており、デシベルに変換しています。10[dB]下がるごとに影響は1/10になります。すなわち-20dBは株価に1%の影響を与えます。
ここで、-20dB以上の成分のない周波数以降を除去してみます。橙色が残った周波数成分で、株価に与える影響が大きいといえます。ちなみに橙色の部分は130日以上の周期です。130日より短い周期の成分は完全に除去されています。
短期の変動を除去したチャートはどうなる?
橙色の成分のみを残して今度は逆フーリエ変換をしてみます。逆フーリエ変換とは文字通り、フーリエ変換が時間データ⇒周波数データ変換をしたのに対して、逆に周波数データ⇒時間データに変換します。
逆フーリエ変換して再び時間データに戻したものを元の株価データに重ねてみます。どうでしょうか? ほとんど株価を再現しています。元のチャートと、130日未満の短期変動成分を除去したチャートの誤差はどのようになっているでしょうか。誤差の累積確率分布(CDF)は下記のグラフのようになります。
このグラフが示しているのは、先ほどの橙色のチャートは90%の確率で、実際のチャートとの誤差が約8%以下に収まるということです。すなわち、130日未満の短期変動の影響を一切無視しても、株価を約8%以下の誤差でほとんど再現可能だということです。
最後に
今回の結果はランダムウォーク理論をおおよそ裏付けていると思います。数日の値動きを見て株価を予想することは意味がありません。それよりもはるかに重要なのは長期変動のサイクルを見極めることです。いまは上昇トレンドなのか、はたまた下降トレンドなのか、それを知ることが最も重要なことです。そして次に重要なのは株は長期で持ち続けること。短期での値動きに翻弄されて売り買いをすることはパフォーマンスの低下を招きます。その企業の長期的な展望をしっかり予測し、腰を据えて保有し続けるのが株式投資の鉄則です。
インデックス投資は最強のドリームチーム
株式投資を始めてみたいけど何をすればいいのかわからない。そんな方はインデックス投資を始めましょう。今日はなぜインデックス投資をするべきなのかを考えてみます。
アクティブ投資、インデックス投資
株式投資には大まかに分けてアクティブ投資とインデックス投資があります。株式投資と聞いて何を想像するでしょうか。いくつものモニターでチャートを映し出して、株の売り買いを繰り返すようなイメージを持っている方もいるかもしれません。そのような投資はアクティブ投資と呼ばれます。市況や企業の業績予想に合わせて個々の株の売り買いを能動的(=アクティブ)に行うのがアクティブ投資家です。また投資信託と呼ばれる金融商品にも、アクティブ型のファンドがあります。アクティブ型投資信託では、ファンドマネージャーが顧客から預かった資産を運用してくれます。すなわち、投資のプロが代わりに資産配分(=ポートフォリオ管理)やリスクコントロールをしてくれるのです。
アクティブファンドは夢の商品…?
アクティブ投資信託を買うだけで、一流のバッターがあなたの代わりに打席に立ってくれます。これほど心強いことはない、ホームラン間違いなしだ、と思うことでしょう。しかし、忘れがちなのはピッチャーもプロ(もしかしたらサイ・ヤング賞投手かも)だと言うことです。今や市場取引のおよそ9割が機関投資家(プロ)により行われています。あなたが選んだファンドマネージャーはプロに勝てるプロでしょうか?
一方、インデックス投資では指数に組み込まれた銘柄全てを購入します。個々の銘柄を売買するアクティブ投資とは対照的です。例えばS&P500へのインデックス投資をした場合、あなたは米国の主要な企業500社の株主となります。S&P500に採用される銘柄を丸ごと買うため、その運用成績はS&P500の指数(=インデックス)に連動します。
下記のグラフはS&P500の長期チャートです。過去30年間(1988~2018年)の間におよそ+1,000%以上の伸びを示しています。年率に換算すると8%台で成長していることになります。1990年代後半のドットコムバブル崩壊、および2008年のリーマンショックの時期を含めてもこれだけの成長をしているのは驚きです。
一流のプロにタダ働きしてもらう
S&P500などの値動きは世界のトッププロ達の総意とも言えます。彼らは非常に優秀かつ努力家で、企業の真の価値を分析することに心血を注いでいます。その結果として形成される市場の価格はほとんどの場合において合理的です(効率的市場仮説)。インデックス投資を行うことで、私たちは彼らのような何千にものトッププロをタダ働き同然で雇うことが出来るのです。
最後に
もし投資信託を購入しようとしているのであれば、ぜひインデックス型をやってみたらいかがでしょう。インデックス型投信はアクティブ型と比較して以下の優位点があります。
- 運用コストが2~3%低い
- 長期リターンでほとんどのアクティブファンドを上回る
(※主に上記1の差が大きく効いてくる) - ファンドマネージャーの能力に左右されない
インデックス投資の有効性についてさらに詳しく知りたい方は下記の書籍も面白いですよ!
インデックス投資は勝者のゲーム──株式市場から確実な利益を得る常識的方法 (ウィザードブックシリーズ Vol.263)
- 作者:ジョン・C・ボーグル,John C. Bogle
- 発売日: 2018/05/13
- メディア: 単行本